感染性胃腸炎
感染性胃腸炎
感染性胃腸炎とは、ウイルスや細菌、寄生虫などの病原体によって、嘔吐・下痢・腹痛などの症状を起こす感染症の総称です。
こどもではウイルスによるものが多く、ノロウイルス、ロタウイルス、アデノウイルスなどが代表的です。細菌ではカンピロバクター、サルモネラ、病原性大腸菌などが原因になることがあります。
多くは自然に改善しますが、嘔吐や下痢が続くと脱水を起こすことがあります。特に乳幼児では、水分がとれているか、おしっこが出ているか、元気があるかを確認することが大切です。
感染性胃腸炎では、主に次のような症状がみられます。
などがみられます。
嘔吐が先に始まり、その後に下痢が出てくることもあります。
症状だけから原因となったウイルスや細菌を正確に判断することは難しく、病原体の名前よりも、脱水や全身状態を確認することが重要です。
嘔吐や下痢が続くと、体から水分と塩分が失われます。
次のような様子がないか確認しましょう。
特に乳幼児は脱水が進みやすいため、「何回吐いたか」だけでなく、水分が飲めているか、おしっこが出ているかを見ることが大切です。
嘔吐や下痢のときは、水分と塩分をバランスよく補える経口補水液(ORS)が適しています。 特に脱水がある場合には、経口補水液による補水が基本です。
ただし、経口補水液はややしょっぱく、味を嫌がって飲んでくれないこともあります。
脱水がなく元気がある、または脱水がごく軽い場合には、経口補水液だけにこだわらず、おこさまが飲めるものから水分をとることも大切です。
例えば、
などを組み合わせながら、水分をとりましょう。
軽い胃腸炎で脱水がほとんどないこどもでは、薄めたりんごジュースと本人が好む飲み物を使った補水が、電解質液のみを使用する方法に劣らなかったという研究もあります。
ただし、ジュースは糖分が多いため、ジュースだけを大量に飲ませるのではなく、ほかの飲み物と組み合わせるとよいでしょう。
そして何より、
「経口補水液を飲んでくれないから、水分がまったくとれない」という状態にしないことが大切です。
嘔吐しているときは、一度にたくさん飲ませず、少量ずつ、こまめに飲ませてみましょう。
母乳を飲んでいる赤ちゃんは、母乳を中止する必要はありません。
嘔吐が落ち着いて水分がとれるようになったら、食事を長く休ませる必要はありません。
おこさまが食べられそうであれば、年齢に合った普段の食事を少しずつ再開していきます。
おかゆやうどんだけに長期間限定する必要はありません。母乳は継続し、ミルクも通常は薄める必要はありません。
無理に食べさせる必要はありませんが、「胃腸を休ませるために何日も食べさせない」という対応は必要ありません。
次のような場合は、小児科を受診しましょう。
特に、
ぐったりして反応が悪い/ほとんど水分がとれない/長時間おしっこが出ない/強い腹痛が続く/血便がある
といった場合には、早めの受診が必要です。
嘔吐や腹痛は、感染性胃腸炎以外の病気でも起こります。
特に、
などの場合には、腸重積や虫垂炎、腸閉塞など、感染性胃腸炎以外の病気も考える必要があります。
「吐いたから胃腸炎」と決めつけず、おこさまの全身状態を見ることが大切です。
感染性胃腸炎では、原因となった病原体を特定しても治療が大きく変わらないことも多くあります。
そのため、原因を調べることよりも、まずは脱水の程度や全身状態、ほかの病気が隠れていないかを確認することが重要です。
血便がある、症状が強い、細菌による腸炎が疑われるなどの場合には、必要に応じて便検査などを行います。
治療で最も大切なのは、失われた水分と塩分を補うことです。
明らかな脱水がある場合には経口補水液を使用し、飲むことが難しい場合や脱水が強い場合には、点滴などが必要になることがあります。WHOも、下痢に伴う脱水に対して低浸透圧ORSによる経口補水を推奨しています。
ウイルス性胃腸炎では、通常、抗菌薬(抗生物質)は必要ありません。
また、こどもに市販の下痢止めを自己判断で使用することはおすすめしません。
整腸剤(プロバイオティクス)は使用されることがありますが、感染性胃腸炎で必ず必要な治療ではありません。WHOの2024年ガイドラインでも、小児の急性水様性下痢に対してプロバイオティクスを一律に使用することは推奨していません。
感染性胃腸炎は、便や吐いたものなどを介して家族に広がることがあります。
特に大切なのは、石けんと流水による手洗いです。トイレのあと、おむつ交換のあと、吐いたものを処理したあとは、しっかり手を洗いましょう。
ノロウイルスやロタウイルスはアルコール消毒が効きにくいため、アルコール消毒だけに頼らないことが大切です。
吐いたものや便が床などについた場合は、
などの対応を行います。
次亜塩素酸ナトリウムは、家庭用の塩素系漂白剤でも代用できます。ただし、漂白作用や金属を腐食させる作用があるため、製品の使用方法・注意事項を確認して使用してください。
また、吐いたものは乾燥すると周囲に広がる可能性があるため、乾燥する前に速やかに処理することも大切です。
感染性胃腸炎に、一律の「発症後○日」という登園停止期間はありません。
嘔吐や下痢がおさまり、普段の食事がとれ、全身状態がよくなってから登園を再開することが目安になります。
回復後もしばらく便中に病原体が排泄されることがあるため、トイレやおむつ交換後の手洗いを続けましょう。
当院では、感染性胃腸炎が疑われるおこさまについて、
を行っています。
感染性胃腸炎では、「何のウイルスか」だけでなく、「水分がとれているか」「脱水になっていないか」「ほかの病気が隠れていないか」を確認することが大切です。
嘔吐や下痢が続く、水分がとれない、おしっこが減ってきた、といった場合も小児科へご相談ください。