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「牛乳を飲むと下痢をするので、牛乳アレルギーでしょうか?」
外来でもよく聞かれる質問です。
牛乳アレルギーと乳糖不耐症は、どちらも牛乳やミルクを飲んだあとに症状が出ることがありますが、原因も対応も異なります。
今回は、2つの違いと、赤ちゃんのミルクはどう選べばよいのかについて解説します。
牛乳アレルギーの症状や検査、治療について詳しく知りたい方はこちらもご覧ください。
▶ 関連記事:[牛乳アレルギー|症状・検査・治療について]
牛乳アレルギーは「乳たんぱく」への反応
牛乳アレルギーは、牛乳に含まれる乳たんぱくに対して免疫が反応する食物アレルギーです。
主な症状には、
- じんましん・皮膚の赤み
- 唇やまぶたの腫れ
- 嘔吐・腹痛
- 咳・ゼーゼー
- 呼吸が苦しい
などがあり、重い場合にはアナフィラキシーを起こすこともあります。
一方、乳児では消化管症状を中心とする非IgE型の牛乳アレルギーもあります。
そのため、症状だけで自己判断せず、症状が出るまでの時間や摂取量などを確認しながら診断することが大切です。
乳糖不耐症は「乳糖をうまく消化できない」状態
乳糖不耐症は食物アレルギーではありません。
牛乳に含まれる糖分である**乳糖(ラクトース)**を分解する「ラクターゼ」という酵素の働きが十分でないことで起こります。
分解されなかった乳糖が大腸に届くことで、
- 下痢
- 腹痛
- お腹がゴロゴロする
- お腹が張る
- ガスが増える
などの症状が起こります。
アレルギー反応ではないため、乳糖不耐症によってじんましんやアナフィラキシーが起こることはありません。
胃腸炎のあとに牛乳やミルクで下痢をすることも
おこさまでよくみられるのが、二次性乳糖不耐症です。
胃腸炎などで小腸の粘膜が傷つくと、一時的に乳糖を分解する力が低下することがあります。
そのため、
「胃腸炎はよくなってきたのに、ミルクや牛乳を飲むと下痢が続く」
ということがあります。
これは牛乳アレルギーとは異なり、腸が回復すると改善することが多い状態です。
牛乳アレルギーと乳糖不耐症の違い
| 牛乳アレルギー | 乳糖不耐症 | |
|---|---|---|
| 原因 | 乳たんぱく | 乳糖 |
| 仕組み | 免疫反応 | 消化・吸収の問題 |
| 主な症状 | じんましん、嘔吐、咳など | 下痢、腹痛、お腹の張りなど |
| アナフィラキシー | 起こることがある | 起こらない |
| 基本的な対応 | 乳たんぱくを必要な範囲で除去 | 症状に応じて乳糖を調整 |
赤ちゃんのミルクはどう選ぶ?
ここも、牛乳アレルギーと乳糖不耐症では異なります。
乳糖不耐症の場合
胃腸炎後などの二次性乳糖不耐症では、下痢の程度や経過に応じて、一時的に乳糖を含まない・減らしたミルクを使用することがあります。
ただし、胃腸炎になったら必ずミルクを変更する必要があるわけではありません。
牛乳アレルギーの場合
牛乳アレルギーでは、通常の育児用ミルクではなく、必要に応じて牛乳アレルギー用ミルクを使用します。
代表的なものに、
- 牛乳たんぱくを細かく分解した「加水分解乳」
- たんぱく質をアミノ酸まで分解した「アミノ酸乳」
があります。
重症の牛乳アレルギーや一部の消化管アレルギーでは、加水分解乳でも症状が出ることがあり、アミノ酸乳が必要になる場合があります。
大切なのは、
「乳糖を含まないミルク=牛乳アレルギー用ミルク」ではない
ということです。
乳糖不耐症用のミルクでも乳たんぱくが含まれていれば、牛乳アレルギーのおこさまには使用できません。
また、「ペプチドミルク」も牛乳たんぱくの分解が十分ではなく、牛乳アレルギーの治療用ミルクとして使用することはできません。
どのミルクが適しているかは、おこさまの症状や重症度によって異なります。自己判断で変更せず、医師と相談して選びましょう。
牛乳アレルギーなら「乳糖」は大丈夫?
牛乳アレルギーの原因は、乳糖そのものではなく乳たんぱくです。
ただし、ここには注意点があります。
乳糖には、製造工程などによってごく微量の乳たんぱくが含まれる場合があります。
通常、加工食品に含まれる乳糖まで除去する必要があるケースはまれですが、ごく微量の乳たんぱくでも症状が出る重症の牛乳アレルギーでは注意が必要です。
また、乳糖は散剤や錠剤、吸入薬などの医薬品にも使われています。非常に感受性の高い牛乳アレルギーでは、乳糖を含む医薬品でまれにアレルギー症状を起こすことがあります。
重症の牛乳アレルギーがある場合は、薬を処方してもらう際にも、必ず医師・薬剤師に牛乳アレルギーがあることを伝えましょう。
一方、「乳糖ゼロ」「乳糖カット」の牛乳でも、乳たんぱくが含まれていれば牛乳アレルギーのおこさまが飲めるわけではありません。
「牛乳を飲むと下痢=牛乳アレルギー」ではありません
牛乳やミルクを飲んで下痢をしても、それだけで牛乳アレルギーとは判断できません。
診断には、
- どのくらい飲むと症状が出るか
- 飲んでからどのくらいで症状が出るか
- じんましん、嘔吐、咳などを伴うか
- 胃腸炎のあとではないか
- 以前は普通に飲めていたか
などの情報が重要です。
牛乳アレルギーでも乳糖不耐症でも、自己判断で長期間牛乳や乳製品を除去することはおすすめしません。
特に乳幼児期は、牛乳やミルクが栄養の大切な供給源になります。原因を整理したうえで、そのおこさまに合った対応を考えていきましょう。
まとめ
牛乳アレルギーと乳糖不耐症は、似ているようで原因が異なります。
牛乳アレルギー → 乳たんぱくに対する免疫反応
乳糖不耐症 → 乳糖を十分に消化できない状態
そして、赤ちゃんの場合には選ぶミルクも異なります。
「牛乳やミルクを飲むと下痢をする」
「どのミルクを選べばよいかわからない」
「牛乳アレルギーと言われたけれど、どこまで除去すればよい?」
そんなときは、自己判断で除去を続けず、小児科・アレルギー科にご相談ください。
関連記事
▶ [牛乳アレルギー|症状・検査・治療について]
▶ [食物アレルギーについて]
▶ [卵アレルギーと卵黄の消化管アレルギー(FPIES)について ~離乳食期の卵の始め方も含めて~]
参考文献
- 食物アレルギー研究会「食物アレルギーの診療の手引き2023」
- 食物アレルギー研究会「食物アレルギーの栄養食事指導の手引き2022」
- 日本小児アレルギー学会「食物アレルギー診療ガイドライン2021」
- Vandenplas Y, et al. An ESPGHAN Position Paper on the Diagnosis, Management, and Prevention of Cow’s Milk Allergy. J Pediatr Gastroenterol Nutr. 2024;78:386-413.
医療監修
みずたまこどもクリニック 院長
田中瑞恵(小児科専門医)







